舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)は、手首の親指側にある舟状骨(しゅうじょうこつ)が折れる骨折です。舟状骨は、手首の関節を構成する手根骨の一つで、他の手根骨に比べて特に骨折しやすい骨です。この骨折は、転倒して手をついたときなど、手首に強い衝撃が加わることでよく発生します。
主な症状
- 親指側の手首の痛み:特に親指側の手首の根元に痛みを感じ、触ると痛みが増します(「スナッフボックス」と呼ばれるくぼみの部分が痛むことが多いです)。
- 手首の腫れ:特に舟状骨周辺が腫れることがあります。
- 手首や親指の可動域制限:手首や親指を動かすと痛みが強くなり、動かしにくくなることがあります。
- 握力の低下:握力が低下し、物を持つのが難しくなる場合があります。
舟状骨骨折は、初期症状が軽いことが多く、単なる「捻挫」と誤診されることがしばしばあります。しかし、放置すると骨の癒合が不完全になる可能性があるため、早期の診断が重要です。
原因
舟状骨骨折の最も一般的な原因は、手をついて転倒したときです。特に、転んだ際に手首が過伸展(過度に反った状態)になることで、親指側にある舟状骨に強い力がかかり、骨折が起こります。スポーツや日常生活での事故がよく原因となります。
診断にはX線やCT、MRIが用いられます。
治療法
舟状骨骨折は、その位置や骨折の程度によって治療法が異なります。舟状骨は血流が乏しく、骨癒合が遅れることがあるため、適切な治療と管理が必要です。
- 保存療法 骨折がずれておらず、比較的軽度の場合は、次のような保存療法が適用される場合がありますが、骨が癒合しにくい場所のため手術を選択されるケースが多いです。
- ギプス固定:通常、6〜12週間にわたって手首から親指を覆うギプスで手首を固定します。固定期間中は、手首や親指を動かさず、安静を保ちます。
- 手術療法 骨癒合が得られにくい骨のため手術が必要となるケースが多いです。
- スクリュー固定:骨をピンやスクリューで固定し、骨が正しく癒合するようにします。これにより、骨が早く治るよう促進されます。
- 骨移植:骨癒合が遅れる場合や、骨が完全にくっつかない「偽関節」が形成された場合は、他の部位から骨を移植して舟状骨を修復することがあります。
- リハビリテーション 固定期間が終了した後は、手首や親指の可動域と筋力を回復させるためのリハビリテーションが必要です。リハビリでは、柔軟性や筋力を徐々に戻していくためのエクササイズが行われます。リハビリを怠ると、手首の動きが制限されたままになる可能性があるため、専門家の指導に従いながら行います。
回復期間
骨癒合が遅れることも多く、特に血流が乏しい舟状骨の部位では、回復がさらに長引く場合があります。手術を行った場合でも、術後のリハビリと管理によって完全回復までに数か月かかることがあります。
予後
舟状骨骨折は適切な治療を受ければ、通常は良好な回復が期待できますが、骨癒合が遅れたり、偽関節が形成されたりすることがあります。偽関節が形成されると、慢性的な痛みや手首の不安定性が残り、日常生活やスポーツに支障をきたすことがあります。そのため、早期診断と治療が非常に重要です。
予防
舟状骨骨折を完全に予防することは難しいですが、以下の対策でリスクを軽減できます。
- スポーツ時の注意:転倒しやすいスポーツ(スキー、スノーボード、サッカーなど)では、適切なフォームでのプレイやプロテクターの使用が推奨されます。
- 転倒時の手の保護:転んだ際には、手をついて衝撃を吸収する代わりに、体全体で衝撃を和らげるように意識すると、手首への過剰な負担を減らすことができます。
舟状骨骨折は見逃されがちですが、適切な診断と治療を受けることで、回復を早めることが可能です。手首や親指に痛みを感じた場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。