脛骨疲労骨折は、脛骨(すねの骨)に繰り返し加わる小さな負荷やストレスが蓄積し、骨に小さな亀裂が生じる骨折の一種です。主にランニングやジャンプを繰り返すスポーツ選手に多く見られ、急激に運動量や負荷を増やしたり、適切な準備や休養を取らずに過度に運動を行うことが原因で発生します。一般的な骨折とは異なり、急な外傷によるものではなく、繰り返しの負荷によって徐々に進行する点が特徴です。

脛骨疲労骨折の原因

疲労骨折の原因は、脛骨にかかる繰り返しの負荷が骨の再生能力を超えることによって起こります。以下が主な原因です。

  1. 過度の運動:特にランニング、バスケットボール、バレーボールなど、膝や足に繰り返し負荷がかかる運動をしている人に多く発生します。
  2. 運動量や強度の急激な増加:急に運動を始めたり、運動量を増やしたりすることで、骨にかかるストレスが急激に増加し、疲労骨折が起こりやすくなります。
  3. 不適切なシューズや硬い地面:クッション性のない靴や硬い地面での運動は、脛骨に過剰な負担をかけ、骨折のリスクを高めます。
  4. 骨密度の低下:特に女性アスリートに多く見られる「女性アスリート三主徴」(月経不順、低エネルギー状態、骨密度の低下)が疲労骨折のリスクを高めます。
  5. 足の構造の問題:扁平足や過剰回内(足が内側に倒れる動作)がある場合、歩行やランニング時に脛骨に余計な負担がかかりやすくなります。

脛骨疲労骨折の症状

脛骨疲労骨折の主な症状は以下の通りです。

  • 脛骨の局所的な痛み:特に脛骨の前側または内側に痛みを感じます。初期段階では運動中に痛みが強くなり、運動を休むと和らぎますが、進行すると安静時や夜間にも痛みが続くことがあります。
  • 腫れ:痛みのある部位に軽度の腫れが見られることがあります。
  • 圧痛:脛骨の痛む部分を押すと痛みが強くなることがあります。
  • 進行に伴う痛みの増加:疲労骨折が進行すると、軽い運動や日常生活でも痛みが持続することがあります。

診断

脛骨疲労骨折の診断は、医師の診察と画像検査に基づいて行われます。

  • 問診と視診:痛みの部位、運動歴、痛みが発生するタイミングを確認します。
  • X線検査:疲労骨折の初期段階ではX線に映らないことが多いため、診断には向かないこともあります。しかし、骨が治癒し始めた段階では骨の変化が見られます。
  • MRI:疲労骨折の診断に最も有効です。MRIでは、骨の炎症や小さな亀裂が早期に確認でき、疲労骨折を正確に診断することができます。

脛骨疲労骨折の治療法

脛骨疲労骨折の治療は、主に保存療法が行われます。疲労骨折は、適切な治療を受けることで自然に治癒することが多く、手術はほとんどの場合必要ありません。

保存療法

  1. 安静と運動制限:まず、痛みを引き起こしている運動や負荷を避け、骨を休ませることが必要です。特にランニングやジャンプなどの高負荷の運動は休止します。痛みが治まるまで数週間から数か月の休養が推奨されます。
  2. 松葉杖やブーツの使用:痛みが強い場合や骨折が進行している場合、松葉杖やブーツを使用して患部への負担を軽減することが効果的です。
  3. アイシング:痛みや炎症を軽減するために、痛みのある部分をアイシングします。1回20分程度、1日に数回行うと効果的です。
  4. NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):抗炎症薬を使用して痛みや炎症を軽減しますが、骨の治癒を遅らせる可能性もあるため、長期使用は避けるべきです。
  5. 理学療法:骨が回復してきた段階で、理学療法士の指導のもと、筋力や柔軟性を回復させるトレーニングを行います。運動を再開する際は、徐々に負荷を増やしていくことが重要です。
  6. インソールの使用:足のアーチをサポートするためのインソールを使用することで、足の構造的な問題を補正し、再発を防ぐことができます。

手術療法

脛骨疲労骨折は通常、保存療法で回復しますが、非常にまれに手術が必要になる場合があります。骨が完全に回復しない場合や、骨折部分が不安定な場合には、手術で固定することが検討されます。

予防

脛骨疲労骨折を予防するためには、以下のポイントを心がけることが重要です。

  1. 運動量を徐々に増やす:運動を始める際や運動量を増やす場合は、徐々に負荷を上げていくことで、骨にかかるストレスを減らします。
  2. 適切なシューズの使用:クッション性があり、足のアーチをサポートするシューズを選ぶことが重要です。特にランニングシューズは足に合ったものを選ぶようにしましょう。
  3. 足やふくらはぎの筋力強化:足やふくらはぎの筋力を強化することで、脛骨にかかる衝撃を吸収しやすくなり、疲労骨折のリスクが減少します。
  4. 柔軟性を保つ:ストレッチを日常的に行い、足やふくらはぎの柔軟性を保つことが重要です。筋肉の柔軟性が高まると、脛骨にかかるストレスが軽減されます。
  5. 表面の変更:硬い地面での運動は避け、柔らかい地面やトラックでのランニングを選ぶことで、脛骨にかかる衝撃を減らすことができます。

まとめ

脛骨疲労骨折は適切な休養とケアを行えば、通常は数週間から数か月で回復します。早期に痛みを感じたら、運動を中断し、医師の診察を受けることが重要です。また、再発を防ぐためには、適切な靴選びや筋力トレーニング、無理のない運動量の調整が大切です。