扁平足は、足のアーチが崩れて足底が平らになる状態を指します。通常、足には歩行時や立っている時の衝撃を吸収するためのアーチ(足弓)があり、これが足の柔軟性や安定性を保ちます。しかし、扁平足ではこのアーチが低下または消失し、足底が完全に地面につくため、長時間の歩行や立位が難しくなり、痛みを引き起こすことがあります。
扁平足の種類
扁平足には大きく分けて2種類あります。
- 柔軟性扁平足:足を上げたときにはアーチが見られますが、立った時や体重をかけたときにアーチが潰れてしまうタイプです。特に子どもに多く見られ、成長とともに自然に改善することもあります。
- 硬直性扁平足:足を上げたときにもアーチが見られず、常に足が平らな状態です。このタイプは、骨や関節の問題が関与していることが多く、痛みや他の症状を伴うことがあります。
扁平足の原因
扁平足には先天的なものと後天的なものがあり、原因はさまざまです。
- 先天性:生まれつきアーチが形成されない場合や、骨の発育不全が原因で起こります。
- 後天性:後天性の扁平足は、以下の要因によって生じることがあります。
- 足の筋力や靭帯の弱化:加齢や過度の使用で足の筋肉や靭帯が弱まり、アーチが崩れることがあります。
- 外傷:足の骨や関節、靭帯に損傷が生じることで、アーチが失われる場合があります。
- 体重増加:過体重や妊娠により足にかかる負荷が増え、アーチが低下することがあります。
- 関節リウマチや糖尿病:これらの疾患は、足の靭帯や筋肉の弱化、変形を引き起こし、扁平足の原因となることがあります。
扁平足の症状
扁平足自体は必ずしも症状を引き起こすわけではありませんが、痛みや不快感を伴う場合もあります。主な症状は以下の通りです。
- 足の疲労感:長時間歩いたり立っていたりすると、足が疲れやすくなります。
- 足の痛み:足の内側や足首、膝、腰に痛みが現れることがあります。特に、アーチが崩れることで足の骨格に不均衡が生じ、痛みが発生します。
- 偏平足による姿勢の悪化:アーチが失われると足のバランスが崩れ、姿勢が悪くなり、膝や腰など他の部位に痛みや負担がかかることがあります。
- 靴のすり減り方の偏り:アーチが崩れることで、靴の内側が特にすり減ることが多くなります。
扁平足の診断
診断は視診や画像診断に基づいて行われます。
- 視診・触診:医師は立ったときの足の形状や、アーチの消失具合を確認します。
- フットプリント検査:足底がどのように地面に接触しているかを確認するために、足跡を取ることがあります。
- X線やMRI検査:骨や関節の異常が原因である場合、画像検査で詳細に評価します。
扁平足の治療法
扁平足の治療は、痛みや不快感の程度、日常生活への影響を基に選択されます。軽度の扁平足の場合、治療を必要としないこともありますが、痛みや機能障害がある場合には以下の治療法が考慮されます。
保存療法
- 靴の調整:扁平足に適した靴を選ぶことが重要です。柔らかく、サポート力のある靴を履くことで、足のアーチが安定し、負担が軽減されます。
- インソール(足底板)の使用:足のアーチをサポートするためのインソール(アーチサポート)を靴に入れることが推奨されます。これにより、足底の衝撃吸収能力が向上し、痛みの軽減が期待されます。
- 理学療法:足の筋力を強化し、アーチを支えるための運動療法が行われます。理学療法士の指導の下、足底筋やふくらはぎの筋肉を鍛えるエクササイズを行います。
- 例:タオルを足でつかむタオルグリップ運動、つま先立ち運動など。
- ストレッチ:足の筋肉や靭帯が硬くなると、アーチに影響を及ぼします。アキレス腱やふくらはぎのストレッチが扁平足に効果的です。
- 体重管理:過体重が原因で扁平足が悪化することがあるため、体重を適正に保つことが重要です。体重を減らすことで足への負担が軽減されます。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、痛みがひどく日常生活に支障がある場合には手術が検討されることがあります。手術は、主にアーチの再構築や変形した骨や関節の修復を目的として行われます。
- 骨切り術(Osteotomy):骨の形状を修正し、アーチを再構築する手術です。
- 腱や靭帯の修復:アーチを支えるための腱や靭帯を修復、または移植する手術です。
- 関節固定術(Arthrodesis):重度の扁平足の場合、関節を固定することで安定性を保つ手術が行われることがあります。
予防と日常ケア
- 適切な靴を選ぶ:サポート力があり、足にフィットする靴を履くことが扁平足の進行を予防します。
- 定期的なエクササイズ:足の筋肉や靭帯を強化するエクササイズを日常的に行うことで、アーチを維持しやすくなります。
- 体重管理:適切な体重を維持することは、足にかかる負担を軽減し、扁平足の進行を防ぐのに役立ちます。
扁平足は必ずしもすべての人に痛みや不快感を引き起こすわけではありませんが、症状がある場合には早めに適切な対処をすることが大切です。