外反母趾は、足の親指(母趾)が外側に曲がり、足の内側の第一中足骨が内側に突出することで、足の親指の付け根に変形と痛みが生じる状態です。この状態になると、足の形が崩れ、靴を履くときに痛みが生じることが多くなります。外反母趾は特に女性に多く見られ、足に合わない靴を長期間履き続けることが主な原因とされています。

外反母趾の原因

外反母趾の発生には複数の要因が関与していますが、以下が主な原因です。

  1. 靴の形状:特に、先の細いハイヒールやパンプスなど、つま先に圧力が集中する靴を長期間履くことが大きな原因です。これにより、親指が外側に押される力がかかり、外反母趾が進行します。
  2. 遺伝:家族に外反母趾のある人がいると、そのリスクが高まることがあります。足の形状や柔軟性、関節の構造が遺伝するためです。
  3. 筋力の低下や不均衡:足の筋肉や靭帯が弱くなると、足のアーチが崩れ、親指にかかる力が偏り、外反母趾の原因になります。
  4. 過剰な体重:体重が増えると足にかかる負荷が増し、足の形状が崩れやすくなります。

外反母趾の症状

  • 親指の外側への曲がり:親指が隣の指に向かって曲がり、その結果、親指の付け根が内側に突出します。
  • 痛みと腫れ:特に、親指の付け根の関節が腫れて痛みを伴うことがあります。靴に当たることで痛みが悪化します。
  • 靴を履くときの不快感:変形した親指のせいで、靴の中で圧迫感や痛みが強まり、履き心地が悪くなります。
  • 足の疲れやこわばり:足全体が疲れやすくなり、長時間歩くのが難しくなることがあります。
  • 他の足の指にも影響:親指の変形が進行すると、隣の指にも圧力がかかり、槌趾(ハンマートゥ)などの他の変形を引き起こすことがあります。

外反母趾の診断

外反母趾の診断は、臨床診察やX線検査を基に行われます。

  • 視診と触診:親指の曲がり具合や関節の腫れ、痛みの有無を確認します。
  • X線検査:親指の曲がり具合や関節の状態、骨の変形を評価し、治療方針を決定します。

外反母趾の治療法

外反母趾の治療は、症状の進行度や痛みの程度によって異なります。軽度の場合は保存療法が一般的に行われ、重度の場合は手術療法が検討されます。

保存療法

  1. 靴の選択:外反母趾の治療において、最も重要なのは適切な靴の選択です。足にフィットし、つま先に十分なスペースがある靴を選ぶことが推奨されます。柔軟な素材で、低めのヒールの靴が理想的です。
  2. インソール(足底板)の使用:インソールを使用することで、足のアーチをサポートし、足にかかる圧力を均等に分散させることができます。これにより、親指への負担が軽減されます。
  3. 足のエクササイズ:足の筋肉を強化するためのストレッチやエクササイズが効果的です。特に、足のアーチを支える筋肉や親指の動きをコントロールする筋肉を鍛える運動が推奨されます。
    • 例:タオルを足でつまんで持ち上げる「タオルギャザー運動」や、親指同士に輪ゴムを引っ掛けて引っ張り合う「ホフマン体操」など。
  4. 足指パッドやサポーターの使用:外反母趾用のパッドやサポーターを使用することで、親指の変形をサポートし、痛みを軽減します。特に、靴の中で圧力がかかる部分を保護するために効果的です。
  5. 痛み止めの使用:痛みが強い場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを使用して炎症や痛みを和らげることができます。

手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、変形が重度で日常生活に支障をきたす場合には、手術が検討されます。

  1. 骨切り術(Osteotomy):変形した骨を切除し、正しい位置に矯正する手術です。親指をまっすぐに戻し、関節の位置を調整します。
  2. 関節固定術(Arthrodesis):親指の関節を固定することで、痛みを緩和し、変形の進行を止める手術です。主に重度の外反母趾に用いられます。
  3. 関節形成術(Arthroplasty):変形した関節の部分を除去し、新たな関節面を形成する手術です。関節の柔軟性を保ちながら変形を改善します。

予後とリハビリ

手術後は、リハビリテーションが重要です。足の筋肉を再び使うためのエクササイズやストレッチを行い、再発を防ぎます。適切な靴選びと継続的なケアが、外反母趾の再発を防ぐために重要です。

予防

  • 適切な靴を履く:先が狭くない靴、十分な幅がある靴、低めのヒールを選ぶことで外反母趾のリスクを減らせます。
  • 足のエクササイズ:日常的に足の筋肉を鍛えることで、足のアーチを保ち、親指への過度な負担を防ぎます。
  • 体重管理:体重が増えると足への負担が増えるため、適切な体重管理も外反母趾予防に役立ちます。

外反母趾は早期発見と適切な治療が大切です。痛みや違和感を感じたら、早めに医師の診断を受けることで、症状の進行を防ぐことができます。