大腿骨内顆骨壊死は、膝関節の一部である大腿骨の内側の骨(内顆)が血流不足によって壊死(細胞が死滅すること)する疾患です。膝の内側に位置する「内顆」は、膝の荷重を受ける重要な部分であり、ここに血液が十分に供給されなくなると、骨が弱くなり、壊死が進行します。
大腿骨内顆骨壊死の主な原因
この疾患は、主に以下の原因で発生します。
- 血行不良:骨に栄養を供給する血流が減少または遮断されることで、骨が壊死します。血行不良の原因には、特定の疾患や薬剤(ステロイドの長期使用など)が関連することがあります。
- 外傷:膝への強い打撃や骨折が原因で血流が途絶えることがあります。
- 自己免疫疾患:関節リウマチやループスなど、自己免疫疾患に関連して血流障害が起こることがあります。
- その他のリスク要因:ステロイド薬の長期使用、アルコールの過剰摂取、脂質代謝異常(高脂血症など)が関与することがあります。
大腿骨内顆骨壊死の症状
- 膝の痛み:最も一般的な症状で、特に膝の内側に痛みが生じます。初期段階では運動後や長時間の歩行後に痛みが現れ、進行すると安静時や夜間にも痛むことがあります。
- 腫れ:膝の内側に腫れが見られることがあります。
- 可動域の制限:膝の屈伸がしづらくなり、動かす際に違和感や痛みを感じることがあります。
- 関節のこわばり:朝や長時間座っていた後に、膝がこわばることがあります。
大腿骨内顆骨壊死の診断
- X線検査:骨の状態を確認し、壊死の進行度を評価します。初期段階ではX線では異常が見えにくい場合もあります。
- MRI検査:MRIは骨壊死を早期に検出できる最も有効な検査方法で、血流が不足している箇所や壊死の範囲を詳細に確認できます。
- CT:骨の詳細な構造や損傷の程度を評価するために使用されることもあります。
大腿骨内顆骨壊死の治療法
治療法は、症状の重さや壊死の進行状況に応じて選ばれます。早期発見が重要であり、適切な治療により症状の進行を抑えることができます。
保存療法
軽度の場合や早期の段階では、保存療法が推奨されます。
- 安静と運動制限:膝にかかる負担を減らすため、長時間の歩行や運動を避け、安静にします。必要に応じて松葉杖を使用して体重をかけないようにすることもあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや炎症を抑えるために使用されます。
- 理学療法:膝周りの筋力を維持するために、軽いストレッチや筋力トレーニングが行われることがあります。膝に負担をかけない範囲で行うことが重要です。
- 体重管理:過体重は膝への負担を増加させるため、体重管理が推奨されます。適切な食事や軽い運動で体重をコントロールします。
手術療法
保存療法が効果を示さない場合や、壊死が進行している場合には手術が検討されます。
- 関節鏡視下手術:初期段階では、関節鏡を使用して壊死部位の圧力を軽減し、痛みを和らげる手術が行われます。この手術は低侵襲で回復が早いのが特徴です。
- 骨切り術(かつりじゅつ):骨の形状を調整し、膝への負担を分散させるための手術です。これにより、壊死部への圧力が減り、進行を抑えることが期待されます。
- 骨移植術:壊死した骨の部分に健全な骨を移植し、再生を促進する手術です。
- 人工膝関節置換術:進行した場合や保存療法・他の手術が効果を示さない場合には、人工膝関節置換術が選択されることがあります。膝関節全体を人工関節に置き換える手術で、重度の痛みや機能障害の改善が期待されます。
予後とリハビリ
手術後のリハビリテーションは、膝の機能を回復させるために重要です。物理療法士の指導の下、徐々に筋力を取り戻し、膝の可動域を回復させます。リハビリの期間は、手術の種類や壊死の進行度に応じて異なりますが、数か月にわたることが一般的です。
予防と管理
- 体重管理:膝に負担をかけないために、適切な体重を維持することが重要です。
- 膝への負担を軽減:過度な運動や膝に負担をかける動作を避け、膝を保護します。
- 早期治療:痛みや違和感がある場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。早期発見で治療の選択肢が広がり、重症化を防ぐことができます。
大腿骨内顆骨壊死は早期発見と適切な治療が重要です。保存療法や手術療法を適切に行うことで、症状の進行を抑え、膝の機能を保つことが可能です。