有痛性分裂膝蓋骨(ゆうつうせいぶんれつしつがいこつ)は、膝蓋骨(しつがいこつ、通称:膝のお皿)が分裂したままの状態で痛みが生じる疾患です。通常、膝蓋骨は成長過程で複数の骨核が癒合して1つの骨になりますが、この癒合が不完全で分裂したまま残っている状態を「分裂膝蓋骨」と呼びます。これ自体は珍しくなく、無症状の場合も多いですが、痛みが伴う場合は「有痛性分裂膝蓋骨」と呼ばれます。

有痛性分裂膝蓋骨の特徴

  • 原因:分裂膝蓋骨は、主に先天的な発育異常が原因です。膝蓋骨の成長過程で、複数の骨核が完全に癒合せず、いくつかの骨片が分かれたままの状態になります。これは特に外側(膝蓋骨の外側部分)に多く見られます。
  • 発症時期:思春期や若年層に多く、運動量が増えることで症状が出やすくなります。また、成人になってからスポーツや膝に負担がかかる動作をすることで発症することもあります。

症状

  • 膝の痛み:主に膝蓋骨の外側に痛みを感じます。痛みは運動時や膝を使う活動(特にジャンプやランニング)で強くなります。
  • 腫れや圧痛:膝蓋骨周囲に腫れや圧痛が生じることがあります。
  • 動作時の不快感:膝を曲げたり伸ばしたりする際に違和感や不快感を覚えることがあります。

診断

診断は、臨床症状と画像診断によって行われます。

  • X線(レントゲン)検査:分裂膝蓋骨の状態が確認できます。複数の骨片が見られる場合は、この疾患が疑われます。
  • MRI:膝蓋骨周辺の軟骨や腱、靭帯の状態も確認できるため、痛みの原因が軟部組織にあるかどうかを判断できます。

有痛性分裂膝蓋骨の治療法

治療法は、症状の重さや患者の生活スタイルに応じて決定されます。主に以下の保存療法と手術療法があります。

保存療法

軽度の場合や、症状が一時的な場合は保存療法が一般的に推奨されます。

  1. 安静:膝に負担がかかる活動を避け、痛みを和らげます。スポーツや激しい運動は控えます。
  2. アイシング:膝の痛みや腫れを軽減するために、膝蓋骨周囲を氷で冷やす処置を行います。
  3. 痛み止めの使用:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用して、痛みや炎症を抑えます。例:イブプロフェンやアスピリン。
  4. 理学療法:筋力を強化し、膝への負担を軽減するためのリハビリテーションが行われます。特に大腿四頭筋の強化が重要です。
  5. サポーターやテーピング:膝蓋骨の安定性を高めるために、膝のサポーターやテーピングを使用します。

手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、痛みが長期にわたって続く場合には手術が検討されます。

  1. 骨片の除去:分裂している膝蓋骨の骨片が原因で痛みが生じている場合、その骨片を取り除く手術が行われます。
  2. 骨片の固定:骨片が大きく、除去することで膝蓋骨の機能が損なわれる可能性がある場合は、骨片を固定する手術(スクリューやピンを用いて)が行われることもあります。

予後

適切な治療とリハビリテーションを行えば、多くの患者は膝の痛みが軽減し、通常の活動に復帰することができます。特に手術後は、膝の機能を回復させるためのリハビリをしっかりと行うことが重要です。

有痛性分裂膝蓋骨は、早期に診断して適切な対応を行うことで、症状の悪化を防ぎ、膝の健康を保つことが可能です。痛みや違和感がある場合は、専門医に相談することが推奨されます。