大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI: Femoroacetabular Impingement)とは

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は、股関節において大腿骨頭と寛骨臼(骨盤の一部)が異常に接触し、摩擦が生じることで痛みや関節の損傷を引き起こす状態を指します。この状態は、主に運動を行う若年者や中高年者に見られ、放置すると関節唇損傷や変形性股関節症に進行することがあります。

FAIのタイプ

FAIには主に2つのタイプがあり、これらが単独または組み合わせて存在することがあります。

  1. カムタイプ(Cam型): 大腿骨頭またはその付近が球状ではなく、形が異常であるため、股関節の動きの中で寛骨臼と衝突します。
  2. ピンサータイプ(Pincer型): 寛骨臼が過度に覆いかぶさっているため、大腿骨頭と接触しやすくなり、インピンジメントが発生します。

主な症状

  • 股関節の痛み: 特に股関節の前方や内側に痛みを感じます。痛みは運動中や長時間座っているときに増すことが多いです。
  • 股関節の可動域の制限: 関節の引っかかり感や硬さが感じられ、動きが制限されることがあります。
  • クリック音や引っかかり感: 股関節を動かしたときに感じることがあります。

治療法

FAIの治療は、症状の程度や患者の活動レベルに応じて異なります。保存療法から手術療法まで、さまざまなアプローチがあります。

  1. 保存療法
    • リハビリテーション: 股関節周囲の筋肉を強化し、可動域を広げるための運動療法が行われます。特に、股関節を安定させる筋肉の強化が重視されます。
    • 生活習慣の改善: 股関節にかかる負担を減らすために、体重管理や過度な運動の見直しが推奨されます。
    • 薬物療法: 痛みや炎症を軽減するために、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)や鎮痛剤が使用されます。
  2. 手術療法
    • 関節鏡視下手術: 軽度から中等度のFAIに対して、関節鏡を用いて損傷した部分を修復する手術が行われます。この手術では、大腿骨頭の異常な部分や寛骨臼の過剰部分を削り取って、関節の形状を正常に戻します。
    • 骨切り術: 大腿骨や寛骨臼の形状異常が顕著な場合には、骨を切って再配置する手術が行われることがあります。
    • 股関節置換術: 重度のFAIや変形性股関節症に進行している場合には、人工股関節に置き換える手術が検討されることがあります。

予後とリハビリテーション

手術療法を受けた場合でも、術後のリハビリテーションが非常に重要です。リハビリを通じて股関節の可動域を回復させ、筋力を強化することで、再発を防ぎ、正常な生活を送ることが可能になります。

FAIの予防や再発防止には、股関節に適切な負荷をかける運動と、日常的に柔軟性を保つストレッチが推奨されます。早期の診断と治療が進行を抑えるために重要です。