仙腸関節炎は、仙骨と腸骨の間にある仙腸関節に炎症が生じることで、腰や骨盤に痛みを引き起こす状態です。この関節は、身体の上部と下部をつなぐ重要な部分で、歩行や体の動きに関与しています。仙腸関節炎は、しばしば腰痛や骨盤痛の原因として見逃されがちですが、適切な診断と治療が重要です。

概要

  • 原因: 仙腸関節炎の原因はさまざまで、以下のような要因が考えられます。
    • 外傷: 交通事故や転倒などによる直接的な外傷。
    • 妊娠: 妊娠中に分泌されるホルモンが関節を緩め、炎症を引き起こすことがあります。
    • 関節リウマチや強直性脊椎炎: これらの慢性炎症性疾患が仙腸関節にも影響を及ぼすことがあります。
    • 長時間の姿勢保持: 座りっぱなしや立ちっぱなしの姿勢が関節に負担をかけ、炎症を引き起こすことがあります。
  • 症状:
    • 骨盤や腰の痛みが主な症状で、痛みが片側または両側に現れることがあります。
    • 痛みは立ち上がるときや階段を登るときに強くなることがあります。
    • 痛みが下肢に放散することもありますが、坐骨神経痛とは異なります。

治療法

仙腸関節炎の治療は、症状の軽減と関節の機能回復を目指して行われます。

  1. 保存的治療
    • 安静: 痛みが強い場合、一時的に安静を保つことが勧められます。
    • 薬物療法: 鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)や筋弛緩薬が使用されることがあります。また、強直性脊椎炎やリウマチが原因の場合は、病状修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が使用されることがあります。
    • 理学療法: 関節の柔軟性を高め、筋力を強化するための運動療法が行われます。これにより、関節への負担を減らし、痛みの軽減を図ります。
    • 姿勢指導: 正しい姿勢を維持することが重要です。また、日常生活での動作を改善するためのアドバイスが提供されます。
  2. 侵襲的治療
    • 関節注射: 痛みが強く、保存的治療が効果を示さない場合、局所麻酔薬やステロイドを仙腸関節に注射することがあります。これにより、炎症が抑えられ、痛みが緩和されます。
    • ラジオ波焼灼術: 関節周囲の神経を高周波で焼灼し、痛みを軽減する方法です。
  3. 手術的治療
    • 保存的治療や関節注射で改善が見られない場合には、手術が検討されることがありますが、非常にまれです。手術では、仙腸関節の固定術が行われることがあります。

予防と生活管理

  • 定期的な運動: 骨盤や腰の周囲の筋肉を強化し、関節への負担を軽減することが重要です。
  • 正しい姿勢の保持: 長時間同じ姿勢をとらないようにし、適切な姿勢を維持することが予防につながります。
  • 体重管理: 過体重は仙腸関節に負担をかけるため、健康的な体重を維持することが推奨されます。

仙腸関節炎は、早期に適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できる疾患です。腰痛や骨盤痛が持続する場合は、早めに医師に相談することが重要です。