腰椎椎体骨折(腰椎圧迫骨折)は、背骨(脊椎)の腰椎部分が押しつぶされるように変形し、骨が折れる状態です。特に高齢者に多く、骨粗鬆症(骨が弱くなる疾患)が原因で、軽い転倒や体重がかかる日常動作でも骨折が発生しやすくなります。また、外傷や腫瘍なども原因になることがあります。
腰椎椎体骨折(腰椎圧迫骨折)の概要
- 症状:
- 突然の強い腰痛: 骨折が発生した直後に、背中や腰に激しい痛みが現れます。特に動作や姿勢を変えたときに痛みが強くなることが多いです。
- 姿勢の変化: 骨折が進行すると、背中が丸くなり(円背)、いわゆる「猫背」のような姿勢になることがあります。これにより、身長が縮むこともあります。
- 運動制限: 腰や背中の痛みが続き、日常の動作が困難になります。立つ、歩く、座るといった動作が制限され、慢性的な痛みが続くこともあります。
- 原因:
- 骨粗鬆症: 高齢者では、骨密度が低下する骨粗鬆症が最も一般的な原因です。骨が脆くなるため、わずかな衝撃でも骨折が起こりやすくなります。
- 外傷: 交通事故や転倒など、大きな衝撃が背骨にかかると、圧迫骨折が発生することがあります。若年者の場合、外傷が主な原因です。
- 腫瘍や転移性がん: 骨にがんが転移した場合や、骨を侵す腫瘍によっても、骨が弱くなり骨折が生じることがあります。
治療法
腰椎圧迫骨折の治療は、患者の年齢、骨折の重症度、骨粗鬆症の有無などによって異なります。治療の目的は、痛みを緩和し、骨折の治癒を促し、日常生活への復帰を支援することです。
- 保存療法(手術を行わない治療): 多くの腰椎圧迫骨折は、保存療法で治療することが可能です。
- 安静: 初期の治療では、痛みを軽減するために一定期間、安静を保ちます。過度な動作や体重をかける行動は避けるべきです。
- 痛みの管理:
- 鎮痛剤: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが使用されます。痛みが強い場合、より強力な鎮痛剤が処方されることもあります。
- コルセットやブレース: 特殊な腰部コルセットを装着することで、腰を安定させ、骨折部分への負担を軽減します。これにより、痛みを和らげ、骨の癒合を助けます。
- リハビリテーション: 骨折の治癒が進むに従い、腰や背中の筋力を強化するリハビリが行われます。理学療法士の指導のもと、姿勢の改善や筋力トレーニングが行われ、再発予防が目指されます。
- 骨粗鬆症治療: 骨粗鬆症が原因で圧迫骨折が起こった場合は、骨粗鬆症の治療が重要です。
- 骨密度を改善する薬: ビスフォスフォネートやデノスマブ、テリパラチドなどの薬が、骨密度を改善し、骨折リスクを低減します。
- カルシウムとビタミンD: 骨の健康を維持するために、適切なカルシウムとビタミンDの摂取が推奨されます。
- 手術療法: 保存療法で改善が見られない場合や、重度の骨折がある場合には、手術が検討されます。
- 椎体形成術(バルーン椎体形成術):
- 圧迫骨折が原因でつぶれた椎骨にセメントを注入する手術です。椎骨の安定性を回復し、痛みを軽減します。
- バルーン椎体形成術では、まず小さなバルーンを椎骨内で膨らませて骨の高さを回復させ、その後にセメントを注入します。
- 脊椎固定術:
- 骨折が重度で、脊椎の安定性が失われている場合、脊椎固定術が行われます。この手術では、金属プレートやスクリューを使用して、椎骨を固定します。
- 椎体形成術(バルーン椎体形成術):
予防策
腰椎圧迫骨折を予防するためには、骨粗鬆症のリスクを低減し、転倒を防ぐことが重要です。
- 骨粗鬆症予防:
- 定期的な骨密度検査を受け、必要に応じて適切な薬物治療を行います。
- カルシウムやビタミンDの摂取を増やし、骨を強化する食事やサプリメントを取り入れます。
- 定期的な運動(特に、体重をかける運動や筋力トレーニング)を行い、骨密度の維持や向上を目指します。
- 転倒防止:
- 室内の環境を整え、転倒しやすいものを排除します。靴や歩行補助具など、転倒予防に役立つアイテムも有効です。
- バランス感覚を養う運動や筋力トレーニングを継続的に行うことも、転倒予防に役立ちます。
まとめ
腰椎圧迫骨折は、高齢者や骨粗鬆症患者に多く見られる腰の骨折で、適切な治療とリハビリを行えば、痛みを軽減し、生活の質を維持することが可能です。早期の診断と治療が重要であり、骨粗鬆症の予防や治療も同時に行うことで、再発を防ぐことができます。