筋・筋膜性腰痛症(ぎっくり腰)は、腰部の筋肉および筋膜に関連する痛みを指す症状です。これは、腰痛の一つで、椎間板ヘルニアや骨の異常などの脊椎由来の問題ではなく、主に筋肉や筋膜(筋肉を包む結合組織)に起因するものです。過度の筋肉の緊張、姿勢の悪さ、長時間の同じ姿勢、過度の運動などが原因となり、腰部に痛みやこわばりが生じることがあります。

筋・筋膜性腰痛症の概要

  • 症状:
    • 腰部に広がる鈍い痛みこわばりが特徴的です。痛みは、特定の動作や姿勢によって増悪することがありますが、じっとしているときにも持続する場合があります。
    • 筋膜トリガーポイント(痛みの引き金となる特定の部位)が存在し、押すと痛みが広がることがあります。
    • 痛みは慢性的に続くことが多いですが、急性の痛みとして発症することもあります。
    • 腰部の筋肉の緊張や硬直を感じ、可動域が制限される場合もあります。
  • 原因:
    • 筋肉の使いすぎ: 長時間にわたる無理な姿勢や、過度の運動、腰に負担がかかる作業が原因で筋肉に負荷がかかり、痛みを引き起こします。
    • 姿勢の悪さ: 長時間座りっぱなしや、背中を曲げた状態での作業、運動不足による筋力低下も原因となります。
    • ストレスや疲労: 精神的なストレスや過度の疲労は、筋肉を緊張させ、筋膜性腰痛を引き起こしやすくします。

治療法

筋筋膜性腰痛症の治療は、症状の軽減と筋肉・筋膜の緊張を和らげ、再発を予防することが目的です。治療法には以下のようなものがあります。

  1. 保存療法(非手術的治療): 筋筋膜性腰痛症は、通常は保存療法によって管理されます。
    • 休養と姿勢改善: 痛みが強い場合は、まずは休息を取って、筋肉に負荷がかかる動作を避けることが重要です。姿勢を正しく保つことで、腰への負担を軽減できます。
    • 物理療法:
      • 温熱療法: 温かいタオルや入浴で腰部を温めることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
      • 冷却療法: 急性の痛みに対しては、氷や冷却パッドを使って炎症を抑えることが有効です。
    • マッサージ: 筋膜トリガーポイントやこわばった筋肉をほぐすためのマッサージが、痛みを和らげ、筋肉の柔軟性を回復させるのに役立ちます。
    • ストレッチとエクササイズ:
      • 特に腰部の筋肉を伸ばすストレッチや、コアマッスルを強化するエクササイズ(ピラティス、ヨガなど)は、腰痛の改善と予防に効果的です。
    • 姿勢矯正: 理学療法士や専門家の指導のもとで、日常生活の中で正しい姿勢を維持するためのトレーニングを行います。
  2. 薬物療法:
    • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): イブプロフェンやロキソニンなどの抗炎症薬を使用して、痛みや炎症を抑えます。
    • 筋弛緩薬: 筋肉の緊張を緩和し、痛みを軽減するために、筋弛緩薬が処方されることがあります。
    • 局所麻酔注射やトリガーポイント注射: 痛みが激しい場合、トリガーポイントに局所麻酔薬やステロイド注射を行い、炎症や痛みを抑える治療が行われることもあります。当院ではハイドロリリースという注射方法で注射を行っています。
  3. リハビリテーション:
    • 筋・筋膜性腰痛の再発を防ぐために、理学療法士の指導のもと、筋力強化や柔軟性の向上を目指したリハビリテーションが推奨されます。特に、体幹(コアマッスル)の強化が重要です。
    • 体幹や骨盤周りの筋肉を強化することで、腰部への負担を軽減し、腰痛の予防に繋がります。
  4. ライフスタイルの改善:
    • 姿勢の改善: 日常生活での姿勢を見直し、腰への負担を減らすための工夫が大切です。例えば、デスクワーク中に正しい座り方を心がける、長時間同じ姿勢を避けるなどです。
    • 適度な運動: ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を継続的に行うことで、腰部の筋肉を柔軟に保ちます。
    • ストレス管理: ストレスや緊張が腰の筋肉に影響を与えることも多いため、リラクゼーションやストレスを減らす活動を取り入れることも有効です。

まとめ

筋・筋膜性腰痛症は、主に筋肉や筋膜の緊張によって引き起こされる腰痛です。姿勢の改善や適切な運動、物理療法などによって、症状を軽減し、再発を防ぐことが可能です。治療法としては、保存療法が中心ですが、慢性化や症状が改善しない場合は、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが重要です。