有鉤骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)は、手首の小指側に位置する有鉤骨という手根骨(手首の骨)の一部が骨折することを指します。有鉤骨には「有鉤突起」というフック状の突起があり、この部分が骨折することがよくあります。主にゴルフ、テニス、野球など、バットやクラブ、ラケットを握るスポーツ選手によく見られる怪我です。
主な症状
- 小指側の手首の痛み:特に、握力を使う動作(握る、押す)で強い痛みが出る。
- 手首や小指側の圧痛:手首の小指側、特に有鉤骨の位置を押すと痛みを感じる。
- 力が入らない:握力が弱くなり、物を強く握れない、もしくは痛みが伴う。
- 神経症状:尺骨神経が有鉤骨の近くを通っているため、骨折に伴い、指や手のしびれを感じることもある。
- 腫れや青あざ:骨折した部位が腫れることがありますが、腫れが軽度で目立たないことも多いです。
原因
有鉤骨骨折は、次のような状況で起こることが多いです:
- スポーツ関連の衝撃:ゴルフクラブや野球のバット、テニスラケットを強く握ってスイングする際、衝撃が手首の小指側にかかることで有鉤突起が骨折することがあります。
- 転倒や外傷:転倒して手をついたり、手首に直接衝撃が加わると、骨折を引き起こすことがあります。
- 反復ストレス:手首に繰り返し負荷がかかる動作や活動によって、徐々に骨折が進行することもあります(疲労骨折)。
治療法
有鉤骨骨折は、放置すると治癒が遅れたり、慢性的な痛みを引き起こす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。治療法には以下の方法があります。
- 保存療法 軽度の骨折や有鉤突起がずれていない場合は、以下の保存療法が適用されます。
- 固定:ギプスやスプリントを使って手首と手の動きを制限し、骨が癒合するのを待ちます。固定期間は通常、4〜6週間です。
- 安静とアイシング:手首の痛みや腫れを軽減するために、安静を保ち、アイシングを行うことが推奨されます。
- 手術 骨折部分がずれている場合や、保存療法で痛みが改善しない場合、またはスポーツ選手などで早期の回復が望まれる場合には、手術が行われることがあります。
- 有鉤突起の除去:骨折した有鉤突起を手術で除去する方法が一般的です。この方法は比較的簡単で、リハビリも比較的短期間です。
- ピンやスクリューでの固定:有鉤骨の位置や状態によっては、骨をピンやスクリューで固定することもあります。
- リハビリテーション 固定期間が終わった後や手術後は、手首や指の可動域を回復させるためのリハビリが必要です。リハビリでは、手の柔軟性や筋力を戻すためのエクササイズを行います。理学療法士の指導のもと、手首や指の動きを徐々に回復させていきます。
回復期間
有鉤骨骨折の回復期間は、治療方法や骨折の程度によって異なります。保存療法の場合、固定期間は約4〜6週間で、その後数週間のリハビリが必要です。手術を行った場合でも、リハビリを含めて数か月で完全に回復することが多いです。
予後
有鉤骨骨折は適切に治療すれば、ほとんどの場合、完全に回復します。しかし、放置したり適切な治療を受けないと、慢性的な痛みや握力の低下が残る可能性があります。特に、骨折が見逃されやすい場合もあるため、痛みや不快感が続く場合は、早めに医師に相談することが重要です。
予防
有鉤骨骨折を予防するためには、スポーツ中の適切なテクニックや用具の使用が大切です。特にゴルフや野球など、手首に強い負荷がかかるスポーツでは、グリップの持ち方や力の使い方に注意することが重要です。また、怪我を防ぐために適切なストレッチや筋力トレーニングも有効です。