ボクサー骨折は、拳(こぶし)を握った状態で小指や薬指の中手骨(手の甲の骨)が折れる骨折のことを指します。特に拳で物を殴ったときに発生しやすいため、ボクサー骨折という名前が付けられていますが、実際には一般の人が誤って物を殴った際にもよく見られる怪我です。
主な症状
- 小指側の手の甲に痛みや腫れが生じる
- 手を握ったり、指を動かすときに強い痛みを感じる
- 小指や薬指が不自然な角度に曲がったり、短くなったりする
- 手の甲に青あざや腫れが見られることがある
- 手を使った力仕事や日常の動作が困難になる
原因
ボクサー骨折は、拳で強い力を加えたときに小指や薬指の中手骨に過度な負担がかかることで発生します。拳で硬い物を殴ったときに最も多く見られる怪我です。特に手の小指側の中手骨は比較的細く、他の指の骨に比べて弱いため、衝撃により簡単に骨折してしまうことがあります。
治療法
ボクサー骨折の治療は、骨折の位置や程度、指の機能に影響が出ているかどうかに応じて異なります。以下が一般的な治療法です。
- 固定療法 骨折がずれていない場合や軽度の骨折の場合、固定具やスプリントを使って手の甲と指を固定します。これにより、骨が自然に癒合するまで安静を保ちます。固定は通常3〜6週間続けられ、定期的に経過観察を行います。
- 整復(骨の矯正) 骨がずれている場合は、整復と呼ばれる手技で骨を元の位置に戻します。整復後は、再びレントゲンで骨の位置を確認し、正しく矯正されているかを確認します。
- 手術 骨折が複雑で、骨のずれが大きい場合や、神経や血管に損傷がある場合には、手術が必要になることがあります。手術では、ピンやプレート、スクリューなどを使って骨を固定し、適切に治癒させます。手術後はリハビリが必要となり、完全に回復するまで数か月かかることがあります。
- リハビリテーション 骨折が治った後は、リハビリを行って指や手の機能を回復させます。リハビリでは、手の可動域や筋力を取り戻すためのエクササイズを行います。適切なリハビリを行わないと、手や指の動きが制限されることがあるため、理学療法士の指導のもとでリハビリを行うことが推奨されます。
回復期間
ボクサー骨折の回復期間は、骨折の程度によって異なりますが、通常は3〜6週間の固定期間が必要です。骨が癒合した後、完全な回復にはさらに数週間から数か月のリハビリが必要になることがあります。早期に適切な治療を行えば、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
予防
ボクサー骨折を予防するためには、無理に硬い物を拳で殴らないことが基本です。特にスポーツや格闘技を行う場合は、適切な技術を身につけ、拳や手首に過度な負担をかけないように注意することが重要です。また、グローブやプロテクターなどの防具を適切に使用することも予防に役立ちます。
ボクサー骨折は早期に治療を受けることで、手や指の機能を回復させることが可能ですが、放置すると骨が不適切に癒合し、将来的に指や手の動きに制限が残ることがあります。怪我をした際は、専門医の診察を受け、適切な治療を行うことが重要です。