上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)は、肘のすぐ上にある上腕骨の一部が骨折する状態です。特に子供に多く見られる骨折で、転倒して手をついた際に肘に強い衝撃がかかることで発生します。この骨折は肘の関節に近い部位で発生するため、治療やリハビリが遅れると肘関節の機能に影響が出ることがあります。
上腕骨顆上骨折の概要
上腕骨顆上骨折は、肘の少し上の部分(上腕骨の遠位部、顆上部分)が骨折する状態です。転倒して手をつく、または肘に直接外力が加わることが原因となることが多く、特に遊びやスポーツで転倒した子供によく発生します。骨折のタイプによって、骨がわずかにずれているものから、大きくずれているものまで様々です。
上腕骨顆上骨折の症状
- 肘の強い痛み: 肘やその周囲に痛みがあり、動かすのが困難です。
- 腫れと変形: 肘やその周辺が腫れ、骨の変形が見られることがあります。
- 動かせない: 肘や腕全体を動かせなくなることが多いです。
- 神経や血管の損傷: 骨折が神経や血管を圧迫することがあり、手や指にしびれや冷感、血流の悪化が見られることがあります。これがある場合、緊急の処置が必要です。
上腕骨顆上骨折の分類
この骨折は、ずれの有無や骨折の形状によって分類されます。
- 非転位型骨折: 骨がずれておらず、整復(位置を戻す操作)が不要なもの。
- 転位型骨折: 骨がずれており、整復が必要なもの。特に神経や血管を圧迫する可能性があるため、緊急治療が必要です。
上腕骨顆上骨折の治療法
骨折の種類や重症度に応じて、治療法が異なります。治療の目的は、骨を正しい位置に戻し、肘の可動域を最大限に回復させることです。
1. 保存療法(非手術的治療)
非転位型骨折や、転位が少ない軽度の骨折では、手術をせずに治療することができます。
- 整復(骨を正しい位置に戻す): 骨がわずかにずれている場合、整復を行います。
- 固定: 整復後、あるいは非転位型骨折の場合は、ギプスやスプリントで肘を固定します。通常、2〜4週間程度固定が必要です。
- リハビリテーション: 固定が外れた後は、肘の可動域や筋力を回復させるためのリハビリが行われます。リハビリを怠ると肘が固まる「拘縮(こうしゅく)」のリスクが高まるため、医師の指示に従って適切に進めます。
2. 手術療法
転位型骨折や、整復で骨を元の位置に戻せない場合、または神経・血管に損傷がある場合は、手術が必要となることがあります。
- ピンニング手術: 骨を正しい位置に整復し、その位置を維持するために金属ピンやスクリューで固定します。この方法は最も一般的な手術です。
- プレートやスクリューによる固定: 大きなずれや複雑な骨折の場合、金属プレートやスクリューで骨を固定することがあります。
- 神経や血管の修復: 骨折によって神経や血管が損傷している場合、それらを修復するための手術が行われることもあります。
3. リハビリテーション
手術後、または固定解除後には、肘の可動域を回復させるためのリハビリが必要です。最初は痛みが残っているため、軽い運動から始め、徐々に可動域を広げたり、筋力トレーニングを行います。リハビリを怠ると、肘が固まってしまう「拘縮」が発生し、将来的に肘の動きが制限されることがあります。
上腕骨顆上骨折の回復期間
回復期間は骨折の重症度や治療法によって異なりますが、転位型や手術を行った場合、完全な回復には数ヶ月かかることがあります。リハビリの進行具合や個人差も影響するため、医師の指示を守りながら慎重に進めることが重要です。
注意点
- 神経や血管の損傷: 骨折によって神経や血管が損傷すると、手や指にしびれや冷感が出ることがあります。これがある場合、緊急の治療が必要です。
- 肘の拘縮: 固定期間が長い場合、肘が固まって動かなくなる「拘縮」が発生することがあります。リハビリをしっかりと行い、肘の可動域を回復させることが大切です。
- 長期的な影響: 骨折が完全に治った後でも、成長期の子供の場合、骨の成長に影響を与える可能性があるため、定期的なフォローアップが必要です。
まとめ
上腕骨顆上骨折は、特に子供に多く見られる骨折ですが、早期に適切な治療を行えば、ほとんどの場合は良好な回復が期待できます。治療には保存的な方法や手術があり、その後のリハビリが非常に重要です。肘の機能を完全に回復させるためには、治療後のリハビリテーションを慎重に進めることが重要です。