肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)は、肘関節の一部である肘頭(肘を曲げたときに突き出る骨の部分、具体的には尺骨の後方に位置する部位)が折れる状態を指します。肘頭は肘の曲げ伸ばしを行う際に重要な役割を果たしており、この部分の骨折は腕の機能に大きな影響を与えることがあります。
肘頭骨折の概要
肘頭骨折は、主に以下のような原因で発生します。
- 転倒や事故: 手をついた際に直接肘を打つことで、強い衝撃が肘頭に加わり骨折が起こることが多いです。
- スポーツ外傷: ラグビーやサッカーなど接触の多いスポーツ、あるいはスキーやスノーボード中の転倒で発生することがあります。
肘頭骨折の症状
- 肘の後方に強い痛み
- 腫れと出血
- 肘を曲げ伸ばしする際の困難
- 肘の変形(折れた骨がずれている場合)
- 手や前腕にかけてしびれや冷感があることもあり、これは神経や血管の損傷を示す場合があります。
肘頭骨折の治療法
肘頭骨折の治療は、骨折の程度や骨片の位置に応じて異なります。軽度の骨折は保存的治療で治癒する場合がありますが、骨が大きくずれている場合や関節の機能が損なわれる可能性がある場合には、手術が必要です。
1. 保存療法(非手術的治療)
骨片がずれていない場合、次のような保存的治療が行われます。
- 固定: 肘を固定するためにシーネやギプスを使用します。通常、3〜4週間の固定期間が必要です。固定期間中は肘を動かすことが制限され、痛みの管理や腫れの軽減が図られます。
- リハビリテーション: 固定解除後には、肘の可動域を回復させるために、軽いストレッチや筋力トレーニングを行います。リハビリは慎重に行い、痛みが引いた段階で強度を徐々に上げていきます。
2. 手術療法
骨片が大きくずれていたり、関節の安定性が損なわれている場合、または複雑な骨折の場合には手術が行われます。手術では以下の方法が用いられます。
- プレートとスクリュー固定: 折れた骨片を金属製のプレートやスクリューで固定します。これにより、骨が正しい位置に保持され、適切に癒合することが期待されます。
- ワイヤー固定: 医療用のピンとワイヤーを使って骨を固定することがあります。
- 骨片の除去: もし骨片が非常に小さく、元に戻すことが難しい場合、骨片を取り除くこともあります。
3. リハビリテーション
手術後や保存療法後は、肘の可動域と筋力を回復させるためのリハビリが重要です。医師や理学療法士の指導のもとで行われ、早期には軽い運動から始め、段階的に運動量を増やしていきます。リハビリの進行が遅れると、肘が固まり可動域が制限される「拘縮(こうしゅく)」が発生する可能性があります。
肘頭骨折の回復期間
回復期間は骨折の重症度や治療法によって異なります。一般的に、軽度の骨折では2〜3ヶ月で完全回復が見込まれますが、重度の骨折や手術を伴う場合は6ヶ月以上のリハビリが必要なこともあります。完全に機能が回復するまでには時間がかかるため、焦らずリハビリを続けることが重要です。
注意点
- 肘頭骨折は関節に近いため、骨折後は関節の動きが制限されることが多く、リハビリを怠ると「拘縮」や「関節痛」が長引く可能性があります。
- 骨が癒合しない「偽関節」が生じることがあるため、骨の治癒をしっかりとモニタリングする必要があります。
まとめ
肘頭骨折は、適切な治療とリハビリを行えば多くの場合回復が可能ですが、骨折の重症度により手術や長期のリハビリが必要となることがあります。早期の治療とその後のリハビリが、肘の機能回復に重要です。