肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、一般には「五十肩」として知られています。この状態は、肩の関節周囲の組織(関節包や筋、腱など)が炎症を起こし、肩の痛みや可動域の制限を引き起こす疾患です。多くの場合、40歳以上の中高年に発症し、特に50歳代に多く見られるため「五十肩」とも呼ばれています。

概要

肩関節周囲炎は、以下のような特徴があります。

  1. 肩の痛み: 肩を動かすときに強い痛みを感じることがあります。特に夜間に痛みが強くなり、寝返りができなくなることもあります。
  2. 可動域の制限: 肩を上げたり、後ろに回したりする動作が困難になります。痛みが強くなると、肩を動かす範囲が徐々に狭くなります。
  3. 発症原因: 明確な原因が不明な場合も多く、加齢に伴う関節や腱の劣化、肩甲骨周囲(肩甲帯)の動きが悪くなってきていることが原因のこともあります。
  4. 進行パターン: 症状は徐々に進行し、急性期(痛みが強い時期)、凍結期(肩の動きが著しく制限される時期)、回復期(痛みが和らぎ、可動域が回復する時期)の3つの段階を経ることが一般的です。

治療法

肩関節周囲炎の治療は、主に痛みの緩和と肩の可動域の回復を目指します。以下のような方法が一般的です。

  1. 安静: 痛みが強い急性期には、無理に肩を動かさず安静にすることが大切です。ただし、完全な固定は関節の硬直を招く可能性があるため、適度な動きを維持することも重要です。
  2. 薬物療法: 鎮痛剤や抗炎症薬(NSAIDs)を使用して痛みと炎症を抑えます。場合によっては、関節内にステロイド注射が行われることもあります。
  3. 理学療法:
    • ストレッチ: 肩の柔軟性を回復させるため、軽いストレッチやリハビリ運動を行います。専門家の指導のもと、少しずつ可動域を広げていくことが重要です。
    • 温熱療法: 肩を温めることで血流を促し、痛みの緩和と炎症の軽減を図ります。
  4. 注射療法: 肩の関節にヒアルロン酸やステロイドを注射して、痛みと炎症を軽減することがあります。
  5. サイレントマニピュレーション:エコーを使いながら頚から麻酔をかけ、癒着してしまった関節包を徒手的に広げる方法です。外来にて日帰りで行うことができます。

予防と回復

肩関節周囲炎を予防するためには、肩の柔軟性を保つための日常的なストレッチや、過度な負担を避けることが推奨されます。肩の痛みが軽減した後も、筋力と可動域の維持に努めることが再発予防に役立ちます。

五十肩は時間をかけて自然に回復することが多いものの、早期の治療とリハビリが症状の改善を早め、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。