中心性頚髄損傷は、頚椎の脊髄が損傷を受けることで発生する神経障害の一種です。特に、脊髄の中央部分が損傷されることが特徴で、通常は腕や手に強い運動障害や感覚異常が見られます。下肢にも影響が出ることがありますが、腕や手ほど重篤ではない場合が多いです。高齢者に多く見られ、交通事故や転倒などによる外傷が主な原因です。診断にはMRIが用いられます。
主な原因
- 外傷: 高齢者の場合、頚椎に軽微な外傷でも損傷を引き起こすことがあります。頭や首を前後に激しく動かす「むち打ち症」や、転倒、事故などが原因となることが多いです。
- 頚椎の変性: 加齢により椎間板や関節が劣化し、頚椎が不安定になることも原因の一つです。特に脊柱管が狭くなっている場合、外力が加わると損傷が起きやすくなります。
- 脊柱管狭窄症: 脊柱管が狭くなることで脊髄に圧力がかかりやすくなり、中心性頚髄損傷を引き起こすリスクが高まります。
中心性頚髄損傷の特徴的な症状
- 上肢(腕や手)の運動障害: 手や腕の筋力低下や麻痺が強く現れるのが特徴です。特に、手先の細かい作業が難しくなることがあります。
- 下肢の影響: 足にも麻痺や筋力低下が生じることがありますが、腕や手に比べて軽度です。
- 感覚異常: 温度感覚や痛みの感覚が鈍くなることがあり、特に手や腕に強く表れます。
- 膀胱や腸の障害: 排尿や排便に問題が生じることがありますが、これも重症度に依存します。
治療法
中心性頚髄損傷の治療は、損傷の程度や患者の全身状態に応じて異なりますが、主に保存的治療と外科的治療のいずれか、またはその両方が行われます。
1. 保存療法
軽症から中等症の中心性頚髄損傷では、保存療法が行われることが多いです。
- 安静と頚椎の安定化: 頚椎カラーやハローベストなどの固定具を使用して、頚椎を安定させます。これにより、損傷した脊髄の回復を促します。
- 薬物療法: 炎症を抑えるためにステロイド薬や、疼痛管理のために鎮痛剤が処方されることがあります。ステロイドの投与は、損傷後の早期に行われることで神経損傷の悪化を抑える効果が期待されます。神経の回復を促すビタミンB12を内服することが多いです。
- リハビリテーション: 運動機能の回復を図るために、理学療法や作業療法を実施します。早期からリハビリを開始することで、筋力や機能の回復を促し、障害の程度を軽減することができます。
2. 外科的治療
損傷が重度で、脊髄への圧迫が強い場合や、症状が急速に進行している場合には外科的手術が必要です。
- 脊髄の減圧手術: 頚椎に対する手術を行い、脊髄に圧迫をかけている骨や椎間板の一部を取り除いて、脊髄への圧力を減少させます。これにより、神経機能の改善が期待されます。
- 脊椎の固定手術: 頚椎の不安定性を改善するために、骨を固定する手術が行われることがあります。これにより、損傷部分を保護し、さらなる神経損傷を防ぎます。
予後とリハビリテーション
中心性頚髄損傷は、患者の年齢や損傷の重さに応じて予後が異なります。若年者の場合、神経の回復が早いことが多く、比較的良好な回復が期待できます。一方、高齢者では脊髄の再生能力が低く、完全な回復が難しい場合があります。
リハビリの重要性
- 運動機能回復の促進: 理学療法や作業療法を通じて、腕や手の機能回復を目指します。リハビリの早期開始が重要です。
まとめ
中心性頚髄損傷は、主に上肢の運動障害や感覚異常を引き起こす疾患で、外傷や加齢による頚椎の変性が主な原因です。早期の診断と適切な治療、リハビリテーションによって、機能回復が期待されますが、予後は損傷の重症度や患者の年齢によって異なります。早めの医療介入が重要です。